'96年6月21日 夏至 

 先の短いレポートから3ケ月たちました。ライラックも終わり、今、谷うつぎのピンクの花がこの小樽の山あいに咲き始めています。

 ゴールデン・ウィークに、東京にすむ教え子の心理療法士Eと彼女の夫と一緒にスペイン旅行をしました。彼女たちは、4度目のリピーターで会話もかなりこなし、和子にとっては私も含めて3人もケア・ヘルパーが付いたぜいたくな旅行でした。マドリードでは、和子のあこがれだったプラド美術館、そしてソフィア王妃美術館ではピカソの『ゲルニカ』と対面しました。美術好きの和子は、絵の前では熱心に見ていますし、特に知っている絵(『王女マルガレーテ』『ラス・メニーナス』をはじめ、何枚もありました)の前では目を輝かせているのですが、もはや瞬間記憶だけの様で、その直後トイレでEに「ここ、日本のどこなんですか」と聞いたそうです。でも3日目、マドリードからグラナダへ行く車窓から何時間も続く赤い土の大地を見ていて、「スペインなんだね」と言いました。往復の飛行機も長く、もう外国旅行はそろそろ限界だなと思わせることも何回かありましたが、彼女自身は楽しい時を過ごして、無事帰ってきました。写真ができて、今ではスペインに行ったことを人に話せるまでに彼女の中に定着しています。

 スペインへ行く前に、近くにある睡眠障害専門の神経内科クリニックを紹介してもらい、帰ってからそこの作業療法室に通っています。週2回、午前中は手作業で、手回しのロクロで湯のみを作ったり、彼女は女の患者さん達と刺し子をしたりしています。午後は毎日体を使う療法で、ウォーキングが中心ですが(毎日4〜8キロも歩きます)、登山もあって、彼女もそれなりに楽しんでいます。

 毎晩の「おうちに帰る」(これは『夕方症候群』という典型的な症状なのだそうです)は相変わらずで、ハンドバッグを持って出かけようとすることもあります。翌朝、まともなときに話すと、「そんなこと、私、言ったの?距離感がなくなっているのかなあ」などと冷静に分析したりしています。

 やっと初夏らしくなり、外を歩くのも楽しくなりました。対応にとまどいながら、何とか元気にやっています。

 ピアノも根が続かず、毎日時間をもたせるのがたいへんになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

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