'96.3月21日

 小樽もやっと春のきざしが見えはじめました。晴れた日は残雪と青空がきれいです。1mを越す雪の山の間から顔を出し始めたふきのとうを見ながら、毎日4〜5キロぐらい歩きます。

 和子の「ちょっとおうち(実家)に行ってくる」というのは相変わらずで、毎晩実家の妹に電話をして相手をしてもらっています。そのあとしばらくは落着きます。毎晩電話をしていることを、本人はもちろん覚えていません。「しばらくでした」と毎回言っています。

 外を1時間余りも歩き、「海がきれいだねぇ」などと話したあとは、「実家まで840キロもあり、特急と新幹線と普通列車を5回も乗り継いで12時間かかる」ということは納得しているのですが、夕方からはもう距離感がまるでなくなるらしくて「ちょっと帰ってくる」と言います。

 去年12月に札幌の病院で撮ったMRI※の断層写真ができて見せてもらいました。その1年前に同じ装置で撮った写真と比べてみて、前頭葉と後頭葉の一部に明らかな萎縮が見られ、病気の進行がわかりました。1ケ月の病院の密室暮らしのせいだけではないと納得させられました。

 朝食のあとや、散歩のあとの気が向いた時は、又ピアノを弾き始めています。

 前回(2月21日付)のレポートから丁度1ケ月たちます。きょうだい達から手紙や電話をもらって励まされています。前からの津の妹のすすめもあり、近くにある小樽市の在宅介護支援センターに電話をして相談しました。早速、相談員のソーシャル・ワーカーが来宅してくれて(3月12日)、和子とも話しもし、状況も見てくれました。そのあとの電話で、若年性の相談を受けたのは初めてだけど、「典型的な症状」だと言われました。翌週(3月18日)その相談員が、訪問看護ステーションの所長と一緒に来てくれて−その時、彼女は丁度ピアノを弾いていたのですが−3人で今後の介護の打合わせをしました。4月は私達が旅行をするので、5月連休明けからになりますが、週2回程度訪問看護婦に来てもらって、その間私は骨休めをする様にと言われています。

 70歳の老人医療給付(あと10年余りもあります)までは、国民健保の3割負担でかなり経費もかかりますが。「よくなるとは期待しない様に」とは言われていますが、人と会うと楽しげなこの頃の彼女を見ていて、いい方向に行く様にと思っています。年末の長いレポートを送った看護婦の教え子からの年賀状に、「福祉を上手に利用して下さい」とあったのを思い出しました。

※MRI:MagneticResonanceImaging(核磁気共鳴診断装置)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

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