介護日記

 

 2010年2月7日 ハイチ大地震と阪神大震災

 和子が1月のショートステイから帰りました。
 お正月過ぎに血尿が出て、熱が上がり、緊急通報で訪問ナースにきてもらい、主治医の指示で抗生剤の点滴と服用を2日続けて回復しました。病人ではあるので気を許すわけにはいかないけれど、まあ基本的には健康体です。

 洗濯物の入れ替えに、週2回行っているけれど、血色のいい顔をしてベッドに寝ています。私の疲労回復にはなるけれど、居るべき人が居ないと寂しいのです。ショートステイ先の病院から、血液検査のコピーをもらいました。全く問題なしで、「健康体」です。大脳の神経繊維がほとんど消失しているのに、不思議ではあります。やはり何回か書いたように、メーカーが出している栄養剤を止めて、私と同じ食事を取っているからでしょう。
 一汁三菜ぐらい、別々にミキサーにかけて、裏ごしして胃瘻から入れているせいだと思っています。

 ハイチ地震に対する日本政府の対応にあきれました。3日もたってから調査団を送るというのですから。医師団やファイバースコープなど、技術に関しては先進国なのに、内閣が替わっても、こういう官僚的な体質は変わらないみたいです。生存の可能性が72時間と言われる現場に、72時間たって調査団とは!瓦礫の下から1週間もたって生存者が助けだされた例がテレビのニュースに映し出された場面をテレビで見ましたが、ハイチ政府が死者20万人と発表する現場です。日本はこういうことにかけては、後進国なみです。そういう政府と日赤の義捐金は、うさんくさいので、ユニセフを通して応分の寄付をしました。調べてないけれど、日本赤十字社だって、厚生官僚の天下り先でしょう。毎日テレビや新聞に出るから覚えてないけれど、どこかかの特殊法人の天下った役人の年俸が1600万円などというのを見ると、募金先にも神経質になります。ずっと募金を続けているアムネスティとユニセフは大丈夫そうです。

 ハイチ大地震、その数日あとの1月17日は阪神・淡路大震災の15周年でした。6400人を超える人が亡くなり、数万人の人が生活の拠点を失いました。
 ホームページに書いたけれど、私はこの地震の時に、和子の病気の進行をまざまざと見せられて、ショックを受けたことが忘れられません。一日何回もテレビで震災の惨状を見ながら、この震災が和子の記憶にとどまるのに数日かかりました。夜中に雪道をはだしで歩くという混乱期のさなかだったけれど、1対1で毎日24時間相手をしている身としては、切実でした。

 少し前に、『クイーン』という映画をテレビで見ました。この『クイーン』はイギリスの現エリザベスU世のことです。ブレア党首の労働党が総選挙で勝利しました。当時ロンドンを離れた王領地に一家で生活していた女王のところに労働党勝利のニュースが入ってきて、女王が直接電話で居間から当選の祝いを言います。全くプライベートな電話で、ブレアは夫人と子ども達の居る部屋で電話を受けています。

 日本の皇室で、こんな自由が許されているのかなあと、映画を見た時に思ったものでした。向こうは立憲君主国で、女王は君主です。さすがに君主の領地で、山あり川ありで、夫のエジンバラ公は一人で馬に乗って鹿撃ちに出かけます。女王の方は古いジープで、ドライブに出かけ、でこぼこ道で車軸を折ってしまいます。
 執事らしき人を電話で呼んで、無事お城に帰るのですが、エジンバラ公が、「新しい車に買い換えたら」と言うのに、女王は「まだ乗れるわ」といいます。車軸が折れるほどの古いジープを愛用しているのです。日本の皇室では・・・とふと考えたけれど、天皇夫妻や皇太子夫妻が自分で運転するわけはないだろうなあと思いました。

 数日後(1997年8月31日)、大事件の知らせが入ります。元皇太子妃のダイアナが、パリで恋人と一緒にトンネルの壁に激突して、亡くなったのです。国民だけでなく世界中の人々から愛されていたダイアナの死を悲しんで、たくさんの人がダイアナ妃が住んでいたケンジントン宮殿前に花束を持って集まります。チャールス皇太子が、ダイアナと結婚した時、すでにカミラという恋人が居て、ダイアナ妃が後に「私たちは最初から妻妾同居でした」と言っていた不幸な結婚は15年でダイアナの離婚で終わりました。チャールス皇太子は晴れてカミラと結婚したのです。

 最初は「ダイアナは私人だから放っておけ」と言っていた女王は、度重なるブレア新首相からの電話で、「弔意」を表す声明をテレビで放送したりしたけれど、マスコミが完全にダイアナ側で、このままでは君主制そのものが危なくなるという首相の危機感で、結局王室一家は空路バッキンガム宮殿に赴いて、国葬という形で落ち着いたのでした。マスコミの世論調査で、国内の王室不要論は半数近くまでいっていました。ダイアナは離婚したけれど、幼い子ども達の母親であることは事実なのですから。

 この映画で思い出したのは、民主党の小沢幹事長が、来日した中国の国家副主席と天皇の会見をセットしようとしたことが、30日ルールに反すると、宮内庁側の強い抵抗にあったことです。
 前にも書いたかも知れないけれど、昭和天皇は終戦の時、責任をとって退位すべきだったと私は思っています。彼は大日本帝国の大元帥であり、神様の存在でした。その戦争で、アジアの人達の犠牲者2000万人、日本人の犠牲者は軍人と民間人会わせて300万人です。
 ポツダム宣言で日本は無条件降伏したのだけれど、宣言の中に、『われわれと日本との関係は、契約的基礎の上に立つているのではなく、無条件降伏を基礎とするものである』という一項があります。「われわれ」とは、連合国側のことで、そのトップが8月28日に厚木飛行場に降り立った連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーです。つまり天皇の処遇も含めて、それを決めるのは「契約的基礎上に立つているのではなく、無条件降伏を基礎とするものである」という厳しいものでした。連合国側には日本の最高指導者だった天皇を戦犯として裁けという国もいくつかあったとか。

 新憲法の公布は1946年11月3日です。マッカーサーが厚木に降り立った日から、1年少しの間に、日本の担当大臣がGHQ(連合国軍総司令部)の建物に往復し、「象徴」という形で天皇の地位は決められました。「象徴」とはシンボルです。
 日本国憲法の前文の次、第1章が天皇です。その第7条に、「天皇は内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ」とあります。
 いろいろ書けばきりが無いけれど、われわれ戦中派にとって「神様」だった天皇が「人間天皇」になったのだから、カルチャーショックそのものでした。
 宮内庁長官が、30日ルールとやらを持ち出して、小沢幹事長に抵抗したけれど、不思議なのは那須や葉山の御用邸に行って静養するのも30日ルールでは、風邪もうかつにひけない。孫の運動会も国事なのだろうか。イギリス王朝の自由さに比べて、何という不自由さだろうと思います。

 許し難いのは、宮内庁管轄の陵墓に歴史学者や考古学者の立ち入りを許していないことです。全面的に発掘調査すれば、日本の古代史はかなり書き換えられるかも知れないのです。
 エジプト政府が世界の考古学者に五千年前の墳墓の発掘を許しているのと比べると、アナクロニズムではすまない、犯罪的なことです。政府はこんな宮内庁長官の更迭をするべきでしょう。そういえば、内閣を組織して、あの階段に並んで、天皇の認証を受けるとき、あの中に宮内庁長官は居ないでしょう。
 このあたりを整理して彼らも国民全体の公僕だということを、はっきりさせるべきだと思うけれど、マスコミもほとんど触れていません。何かあの二重橋の中に、宮内庁独立国家が存在しているとしか思えません。
 ついでに調べたら、2007年度予算で、宮内庁経費109億円、天皇、皇族の生活や活動の費用として皇室費が68億円、施設整備に必要な経費などで、07年度は62億・・・その他いろいろあるようです。予算計上と国会の議決を必要とすることになっているけれど、会計検査院が調査に入ったというニュースは私は知りません。
 法の番人である警察庁でさえ膨大な裏金の存在が指摘されるのだから、宮内庁だけは「きれい」です、などということはあり得ないだろうと思います。エリザベスU世のような、車軸の折れるようなボロジープを自分で乗り回している世界とは違うようです。国民の血税です。私はむしろ、お金のことまで自分でやりくりする国民に比べて、皇室の人たちは気の毒だと思います。
 何年か前の天皇主催の園遊会、女優で司会者としてつとに有名なK氏、作家で僧籍を得てベストセラーズも出てお忙しいS氏、二人とも「(天皇から)お言葉をいただいた」と感激しているのに驚きました。彼女たちは福沢諭吉を読み直したらいいと思います。
 以来、私はこの二人が出てきたらテレビの音を消します。「人の上に人を作って」いなければ、「お言葉を賜った」などという時代錯誤の言葉が出てくる筈がないからです。

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 毎月書くといいながら、年始のご挨拶から1ヶ月以上たちました。パソコンの不調で、年末2回ほどBCCでお送りしたメルマガが届かなかった方が相当数いらっしゃると思います。2009年11月3日と2009年12月20日をご覧頂ければ幸いです。

 それから訂正があります。
 11月3日付の記述で、
 「オバマ大統領が、アメリカの原子力発電所の建設にゴーサインを出したというニュースが流れています。アメリカは1979年にスリーマイル島原発で炉心溶融という大事故を起こして以来、原発を稼働していないから、実に満30年たって自らタブーを解いたことになります」

 この記述に、在米の教え子からメールがきました。スリーマイル島原発以来アメリカは新しい原発の建設はやめたけれど、動いている原発は動いています、と。早速調べたら50数基の原発は稼働していました。私のテレビニュースの聞き取りミスです。オバマは2酸化炭素の排出を減らす為と称して更に50数基の着工にゴーサインを出し、合計100基を超える原発が動くことになります。
 日本の原発は2008年1月現在稼働中55基、49,467万kwアメリカは104基106,061万kwです。地球温暖化は深刻だからと言って、「トイレの無いマンション」を作り続けてどうする気だろうと思います。今までは補修点検時に出た低レベル廃棄物だったけれど、日本の場合半数は廃炉の時期が近づいています。

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