介護日記

 

 2009年8月28日 遭難(その2)、8月という月

 朝日新聞の8月25日付けの社会面に要旨こんな記事が載りました。

 「トムラウシ山で遭難したツアー客らは、同じ避難小屋から同時刻の同じ小屋を出発して無事故で下山したパーティーに比べ、3倍の距離を歩いていた・・中略、無事故で下山した静岡県の山岳会(60台の男女6名)は層雲峡から出発して2泊3日で下山する計画を、初日から雨天になり、その後も悪天候が予想されたため、予備日を使って1日あたりの移動距離を短縮し山小屋も3ヶ所3泊に増やした。  道警によると、8月15日の移動距離は静岡のパーティーが約6キロ、遭難したツアーは約16キロ・・・」

 山岳会という、会員の実力が基本的に把握できるパーティーが、これだけ慎重に行動しているのに、寄せ集めのツアーでコンダクター3人のうち1人しかこの山を知らず、しかも天候が悪化したときの経験も無かったのでしょう。しかもトランシーバーも持たず、携帯に頼っていたとは、・・・言うべき言葉もありません。力尽きてばらばらになって命を失った参加者たちの事を考えると胸が痛みます。
 天気が悪くなった時、引き返すか停滞するか、その場所を熟知したツアコンが付きそう場合は別にして、今回のトムラウシ遭難は、そういうツアーの存在自体が問題外です。

 ニューヨークで建築家の仕事をしている教え子から、前回の号に対していち早く反応が来ました。
 その一部を転載します。

 私は、登山、特にトレッキングのツアー化にさほど反対ではありません。一般論として、たとえば私のように40を過ぎてから生活基盤を変えたりした場合、仕事以外の趣味にさほど時間をかけられないし、同じ頻度で登山やハイキングを楽しめる仲間を探すのは困難です。いろいろな条件で、アメリカ、イギリスでは、似たような環境にいる中年以上の人が増えていて、トレッキングやかなり本格的な登山、ロッククライミング、ラフティングなどの、アウトドアツアーが盛んです。第一、グランドキャニオンなんか、ちょっとした2〜3時間のハイキングでも迷子になったら、まあ生きて帰れないでしょう。
 今回のニュースのような日本的?ツアーの場合、ツアーの企画サイド・参加者サイドともに、自然体験の基礎知識、危機意識、危機管理能力、危機判断能力が極めて低いのに、ちょっと驚いています。
 こちらの場合、単なるラフティング(急流の川くだり)でも、落ちたら簡単に死ぬようなところでツアーをやっていたりしますが、まず、ツアーの参加前に、危険の発生の可能性(もちろんゼロでないことの説明・割合として1%以下とか・・・)と自己責任の説明があって(口頭と文書・・・口頭は無い場合も)、同意書にサインしなくては参加できません。自分でツアーの内容を査定して(どのようなガイド・サービス・危機管理)、自分でやらなくてはいけないことを認識するわけです。いざツアーとなった場合でも、途中でガイドあるいは参加者から何人かあるいは一人の力量不足のために、危険が予測された場合、ツアーの前半で同行拒否されます。料金のチャージはツアーの設定でちがいますが、返還されないことが多いはずです。本人が、自分の能力を判断できなかったわけですから。まあ、なんでもかんでも訴訟の国なので、とにかく細部にわたって、記述があって同意が必要です。

 私は彼女の意見に全く同感です。日本のツアーは「みんなで渡れば怖くない」という感じがしてなりません。そして最終的には日本流の自己責任論です
 今度の事故も最終的に刑事責任は問えないだろうし、遺族が民事賠償責任を問うのも無理ではないかという感じがしてなりません。そして何年かの間に風化してまた同じことが繰り返されるという気がします。何年か前の羊蹄山の事故も、コンダクターに執行猶予付きの判決が出たと記憶しています。

 さて8月という月のことです。
 ヒロシマ原爆投下の日、6日は私は外出していました。アナログレコーダーが少し不調で、録画できませんでした。9日は家に居たので、テレビアサヒの政治討論番組、サンデープロジェクト(10時〜11時45分)を録画していました。新聞のテレビ欄に11時40分からNHK総合の番組「長崎平和記念式典の中継と出ていました。
 長崎に原爆が投下されたのは、1945年8月9日午前11時2分です。今年はそれから64年の記念日です。番組欄にあった40分はもう平和記念式典が始まったあとの映像でした。10分たったら突然ローカル放送に変わりました。そして天気予報なんかがあって、正午からの普通のニュース、そして1時15分からは「のど自慢」でした。
 思わず新聞のテレビ欄を見直しました。この日は日曜日でした。長崎では平和記念式典がずっと続いていました。これが「唯一の公共放送」を標榜する局のやることかと、NHKの堕落を怒り、むなしくなりました。総合・教育・衛星2波、それにハイビジョンと国内向けに五つの電波を持っているNHKです。
 ちなみに録画してあったサンデープロジェクトを見ました。司会の田原総一郎が、参加者全員の「黙祷をしましょう」と、全員で黙祷をしました。時間は短かったけれど、ノーテンキのNHKに比べてどれほど心がこもっていたことか。
 「公共放送」ならば、8月の6日と9日の一日ぐらいは、祈りの日として特別番組を組むべきです。

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