介護日記

 

 2008年1月28日

 2008年元旦、下記のメールマガジン号外を皆さんに送りました。

 2008年の新しい年を迎えました。 除夜の鐘が聞こえると年越しの雰囲気も出るのですが、北海道はお寺の数が少なく、ベランダの戸を開けても、鐘の音は聞こえてきません。
 去年はずいぶんいろいろなことがありました。政治・環境・福祉といった私たちを取り巻く回りの状況も、私たち自身の問題でも。
 でも和子はまた1年を無事に生きました。入院するような病気もせず、安定しないお天気の中を、ずいぶん車椅子散歩をしました。表情の変化も豊かで、顔色も良く、病歴20年を超すアルツハイマー病患者には見えません。CT検査の結果は、病気の容赦ない進行を示していますが、検査の結果はともあれ、元気に生きていこうと思っています。
 今年も、インターネットをなさっている方には、年賀状を失礼することになりそうですが、どうかお許し下さい。

        2008年元旦       後藤 治・和子

 年明けに主治医の一人、女医Mから届いたメールの一部です。

年が明けてようやく暇になり、部屋を片付けていると『和子』が出てきました。思わず読み通してしまいました。 いろいろな出来事がありましたね。 懐かしいような。
でも、いまさらながら、あの(病状の)時期に先生と和子さんはなんと豊かな日々を送られていたのでしょう。 それは今も続いているのですね。
前回CTを見せて頂いて頭でわかっていても、医者でもショックでした。 なのにこれほど豊かに生活できる。 菲薄化した大脳皮質に音符が踊っているさまを思い浮かべました。 本の中の、「和子さんは貯金があるから・・」と言う言葉もしみ入りました。
でも、『和子』を読むたび、聡明でユーモアのあった和子さんが、混乱期の時代に和子さん自身がどんなにつらかったか、苦しかったか、思うのです。 そして、支える先生の心の内を思うのです。

 改めて、私たちは教え子たちに見守られて生きてきたことを思いました。

 昭和ひとけた世代の私は、いつの頃からか毎年巡ってくる「祈りの日」を意識して生きてきました。3月19日の東京大空襲(焼死した人の数はヒロシマ原爆に匹敵します)、そして7月の岐阜大空襲と、通っていた工業学校のあった大垣の大空襲、それぞれ数百人の死者を出し、マチは壊滅しました。
 そして8月6日のヒロシマ・9日のナガサキ原爆。15日の終戦の日、放送で流された昭和天皇の「玉音(ぎょくおん)放送」。神様だった人の声がラジオで流れたのも、何か不思議でした。
 12月8日は太平洋戦争が始まった日。太平洋の向こうではハワイ真珠湾の米艦隊に奇襲攻撃、そしてアジアではインドシナ半島・フィリピンからインドネシアにいたる南太平洋諸島の占領。

 これは15年戦争とも言われるアジア太平洋戦争が太平洋全域に拡がった日でした。何回も書くけれど、この戦乱で中国を初めとするアジア全域の犠牲者2000万人、日本人の犠牲者は300万人と言われています。戦争の記憶を持つ世代が退場していくいま、誰がこの戦争の記憶を、中でも日本帝国が果たした役割を次の世代に継承していくのだろうと思わないでいられません。

 和子は1936年(昭和11年)生まれで、ひとけたに近いのです。宮城県の田舎町で空襲の経験はないけれど、もし今の病気にかからなければ、私と同じ感想を共有し続けたでしょう。

 札幌は作日(27日)で19日間も真冬日が続きました。20年振りの記録だとか。グリーンランドやシベリアの氷が融けたり、ヒマラヤの氷河がどんどん融けている映像を見ると怖ろしくなります。

 福田総理はダボス会議で特別講演し、温室ガス削減、国別総量目標を、と訴えたと新聞は伝えているけれど、京都議定書以来、議長国として日本政府がどれほどの努力をしたのか疑わしくなります。ダボス会議に参加したEU諸国のCO2削減への努力を見ると、日本は何もやっていないのに等しいという感じです。自分の国の実績もなく、具体的な計画を持たない国の首相が、よく演説などするなあと思います。
 たとえば風力発電にしても、日本は電力会社が買い入れ量の上限をを勝手に決めています。EUでは法律で義務化している国が多いのです。地球温暖化対策後進国の日本が、洞爺湖サミットのホスト国として恥ずかしくない国内体制をつくれるのだろうかと私は思います。

 和子は、女医Mが書いてくれたように、心豊かに生きていると思います。長い混乱期を経て、2000年の介護保険制度が始まったとき(特別養護老人ホームに居たのですが)要介護5で、この3月で満8年になります。在宅介護はこの2月で満5年です。混乱期の次は末期とか終期とか教科書には書いてあるけれど、私は和子が長期安定期に入っているという気がします。推定発病から満23年になります。

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