2000年5月24日 

 

 北海道にも素敵な5月がやってきました。桜も梅も散ったけれど、今みずみずしい若葉が目に染みます。
 

 シューマンの歌曲集『詩人の恋』のCDを2人で聴きました。
3年前に来日したバリトン歌手のトーマス・ハンプソンが歌っています。同じ曲をFM放送で聴いて感動したので、注文して手に入れたのです。そのあと家で和子と何回も一緒に聴いたけど、その頃彼女は不安定な日々でした。

 3年経って病気は随分進み、生活の全てが全介助になりました。不安定ながら毎日歌っていた歌も歌えなくなりました。でも今はホームの応接室で、微笑みながらシューマンを静かに聴いています。この歌曲集の冒頭の曲が「美しい五月に」という曲です。

 お天気が悪かったゴールデンウィークから2週間余りたちました。
 いま遅咲きの八重桜が咲き始めています。ここは谷あいに開けたマチです。山肌を青葉と残雪が彩り、とても美しい季節の到来です。

 長かった冬が終わって私の心臓も発作の心配が少なくなり、和子も安定した日々が続いて、いい写真が撮れました。東京の教え子が訪ねてくれたときも、笑顔がいっぱいでした。

 3月初めから和子は車椅子生活になりました。でも、このところ精神的に安定してきたので、ホームのケアプランにリハビリを組んでもらい、少し立つことができるようになりました。スタッフに付き添われて、歩く練習も始めています。


 美しい5月です。堀辰雄の『風立ちぬ』の中の一節、「風立ちぬ、いざ生きめやも」という詩句を思い出しています。この何年か、この一節を何度思い出したかわかりません。
 あの時代、死の病と言われた重度の結核にかかりながら、彼がが「いざ生きめやも」と詠ったことを忘れません。

 和子が少し歩けるようになったら、車に乗せてドライブに連れて行こうと、希望を膨らませています。
 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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