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<日本の福祉についてひとこと>その6

『バリアー・フリー』あるいは『ユニバーサル』について

 JR小樽築港駅のそばにマイカルという大きなショッピング・エリアができました。古い駅舎も改築されて(予算の大部分は市が出したのですが)、マイカルと継ながりました。
 駅舎は橋上駅で、エレベーターも付きました。車椅子マークの表示があるだけで、誰でも使えます。車椅子トイレもできました。「世の中バリアー・フリーになった」と実感します。

 2年前の4月が最後になりましたが、病気の和子と一緒にずいぶん旅をしました。いま一人で旅をして、車椅子トイレやエレベーターを探さない自分に気付きます。列車や飛行機に乗る前後はいつも車椅子トイレを探していました。その頃のことはレポートに書きました。

 見当識失調の彼女には、階段よりはエレベーターが便利でした。エスカレーターは手をつないで横に立ちにくい(東京でエスカレーターを塞いで急ぎの人に何度か怒られました)ので彼女が不安になり、あまり利用しませんでした。エレベーターなら手をつないだまま乗れます。

 小樽に生涯学習センターという新しい施設が出来ました。家族の会の学習会に行ったとき(2年前ですが)、和子をトイレに連れて行って困りました。ご丁寧に男女別の車椅子トイレがあって、しかも入り口のドアに「身体障害者専用です」と貼り紙がしてあるのです。

 その何年か前に出来た市のホールには車椅子トイレが別にあって、和子と音楽会に行ったとき何度も使っていました。学習会から帰ってから「異性を介助する時、どちらを使ったたらいいのでしょう? 私の妻は”身体”障害ではなくアルツハイマーで介助が必要なのですが」とセンター長宛に手紙を書いたのですが、返事はありません。

 去年、和子がショート・ステイの週末、その前の年に札幌に出来た新しい市のホールに、車椅子生活の知人と音楽会に行きました。学童保育を親が作っていた時代の仲間です。和子は音楽会で耳を塞ぐようになっていたので連れて行けませんでした。
 車椅子マークの専用駐車場もあり、係の人も親切でしたが、エレベーターの入り口に「身体障害者専用」(Physical-handicapped only) というプレートが貼ってあります。バリアー・フリー先進国のアメリカでこんな表示があるのだろうか?と首をかしげたくなります。
 しかも車椅子トイレは男女それぞれのトイレの中です。私は和子を男子トイレの中でも連れて入るけれど、逆だったら(こっちの方が多いでしょう)物議をかもすのではないかと心配になります
 私は札幌市民ではないけれど、「
市民の税金を使って何という愚かなことを!」と思います。

 同じ札幌市営の地下鉄のエレベーターに当初あった「身体障害者・高齢者専用」という意味の表示は、いまは「どなたもご自由にお使いください」という意味の表示に変わっています。

 こんな話を支援センターのワーカーに話したとき、彼女は「後藤さん、もうバリアー・フリーでなくて、ユニバーサルと言うんだそうですよ」と言いました。Universal とは辞書では「万人に共通の」という訳語があります。そうなるのに何十年かかるのかなあ、と思います。            

                     '99.5.30