<日本の福祉についてひとこと> その5
介護保険の実施まで1年を切りました。しかしこの地では、その内容はまだ皆目判りません。市の広報にも何も載りません。 厚生省がいろいろ細目の通達を出していると報じられていますが、「本当に間に合うのだろうか?」と思います。 一番困るのは、いま利用しているサービスが、来年4月以降どうなるのか見当もつかないことです。 保険料がいくらになるのか、1割負担と言われるサービス・メニュー毎の金額ももちろん判りません。 1年先の生活のメドがたたない、などという事態が戦争でもない平時にあり得るのだろうか、という気さえします。
ところで今回書こうと思っていたことは別のことです。
一昨年(97年)11月のNHKの、BS討論『介護保険・あなたの老後はどうなるか』のなかで紹介された一つのことが忘れられないのです。 オーストラリアの老人ホームなどの福祉施設の利用者と家族に渡される小冊子があります。表紙に大きい字で、“Your Guide to Residents' Rights in
NursingHomes”とあります。 “ホームの利用者の諸権利についてのガイド”ということでしょうか。 その中に、苦情を言っていく先が明示してあります。それは直接連邦政府の機関で、調査がすぐ入り、改善命令が出て2週間以内に改善されないときは、その施設に閉鎖命令が出ると、これを紹介した奈良女子大の木村助教授が話してました。 オーストラリアは、北欧諸国ほどには高齢者福祉の先進国として有名ではないと私は思うのですが。
前に一時利用した『老人保健施設』のワーカーが、「少し前までは “姨捨”の世界でしたからねえ」と話していたのを忘れません。苦情を持っていく先など、この国には制度として何もありません。 介護保険実施に向けて、この頃オンブズマン制度のことが言われ始めています。諦めているわけではないけれど、病気が進んでいる吾が妻を見ていると「間に合わない」という実感もあります。
'99.4.18
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