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 「天然のパーマや茶髪に頭髪証明書」??

 4月16日の朝日新聞夕刊に、《「天然のパーマや茶髪は申請を」高校で「頭髪証明書」》という、とんでもない記事が載りました。札幌の某大規模校の話です。「生徒や保護者から抗議を受けたことはない。頭髪検査の際に、ほかの生徒の前で説明する必要がないようにとの教育的配慮だ」と説明している校長の名を見て仰天しました。彼は私の30年余りの教師生活で最初に担任した生徒です。同じ記事に、「証明書を持たせることは、生まれつきの個性を特別視する行為で、子どもの存在をありのまま受け入れる姿勢が現場にないことを示している。外形にとらわれた管理的な発想は本当の教育にはつながらない。人権を大切にすべき教育の出発点を間違っている」と日弁連子どもの権利委員会委員長の、控え目なコメントが載っています。何年か前から、本州のあちこちで、「ちぢれ毛証明書」や「茶髪証明書」のばかげたニュースがあったけれど、こんなニュースで私の最初の教え子の名前にお目にかかるとは、2〜3年生の2年間担任した身として、何とも忸怩たる思いがあります。

 同じ日本人でも、色の白い子、浅黒い子などいろいろいます。全員に証明書を持たせますか? この校長は、生徒や保護者が「物言わぬ(言えぬ)状態」だということも感じないのでしょうか。何せ親は子どもを人質に取られているんだから、そう簡単に抗議できるものではないということにも気付かないのでしょうか。私が親だったら、もちろん抗議するけれど。私は教師をやっている間、教師が子どもを人質を取っているという冷厳な事実を忘れないように、つとめてきました。
 うちの子ども達は黒髪でストレートだったけれど、同じ高校教師として、こんなばかげたことが、自分の子どもの学校でやられていたら黙っていません。校長職を引き受ける前に、憲法と教育基本法をちゃんと読んだのか、尋ねたくなります。 あの日高の田舎の高校で、今から考えれば自由で大らかな高校生活を送った、ごく目立たない普通の子ども(シャイな感じの優しい顔を思い出します)だった彼の、40年経っての姿に驚くばかりです。

 同じ朝日新聞の4月23日付の記事に、《『権利条例』子どもが作った。「安心して生きる」「自分で決める」・・・川崎市で施行 》という記事が載りました。《政府が国連の「子どもの権利条約」を批准して7年、・・・条約の理念を形にしようという動きは少しずつ広がっている》とあります。こういう記事と、この札幌の高校の、まるで正反対の実例を、どう考えたらいいのでしょう。

 「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設し て、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の 実現は、根本において教育の力にまつべきものである。
  われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期す るとともに、・・・」と、教育基本法・前文 は続きます。

 教師を辞めて10年余り経つけれど、私は今でもときどき憲法と教育基本法を取り出して読んでいます。

                    2001.5.21