『オンブズマン構想後退 厚生省方針 希望の市町村に限定』
これは朝日新聞2月26日の朝刊記事の見出しです。 「厚生省は、実施する市町村が老人クラブや民生委員らから地域の代表を選任し、権限を委嘱して介護施設などを訪問してもらう方法を検討・・」とあります。
オンブズマン(ombudsman)とはスウェーデン語で”代理人”の意味です。「オンブズマン制度」のことは去年4月に書きました。 オンブズマン制度とは第3者によって利用者の苦情を処理し、行政に改善を促すための制度です。 老人クラブという単なる親睦団体や、民生委員というボランティア的な半名誉職の立場の人たちに、施設利用者の”代理人機能”をさせようなどと、こんな案を考えた役人はバカではないかと思います。
そんなシステムが機能しているのなら、「死後3日たっての孤老死発見事件」や、「2歳の女児凍死事件」など起きる筈がないではないかと思います。 私はこんな事件がボランティアの民生委員の責任だなどと全く思いません。すべて行政の責任です。そのために私たちは税金を払い続けているのです。 ちなみに、この土地に住み始めて5年余り、命が幾つあっても足りない思いを何度もしてきたけれど、民生委員が誰かは全く知りません。 駐在所の警官は巡回してくるけれど、民生委員はきたことがありません。在宅介護支援センターのソーシャルワーカーの話では、名簿には載っているそうですが。
地域によって熱心な方もいらっしゃるとは聞きますが、制度として機能しているわけでは全くありません。私は老人クラブや民生委員が”地域の代表”などと思ったこともないし、その方たちも迷惑だと思います。
21世紀の日本の福祉制度の根幹を担う介護保険の、”利用者側の代理人”という重い責任を、こんな形でごまかそうという感覚にはあきれるほかありません。 東京の幾つかの特別養護老人ホームが共同で、外部の弁護士等で構成するオンブズマンに苦情処理を委託するというニュースが報じられたのは1年も前です。 民間ははるかに先を行っているのに、キャリアー組の考えることの愚かしさにはため息もでません。 「この期に及んで笑うべき蒙昧さ!」と言うべきか。「開いた口がふさがらない」とはこのことです。
準備が整わないのならやらない方がマシです。こういうゴマカシは「悔いを千歳(せんざい)に残す」だけでしょう。
2000.3.1
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