生徒をダシに予備校と宴会


 9月某日、札幌の某予備校主催進学説明会。場所市内某ホテル、夕方5時半開始。1時間程度の説明会のあとは宴会。集まったのは市内の高校3年生の担任と進路指導部の教師約50人。有名受験高のA高とB高とも10人ぐらい出席。料理が出て、酒が出て、給仕をする女性までが現われて、そして帰りには2000円の交通費と3000円の図書券が全員に。実情を知らないで参加したことを後悔しながら、私に話してくれた同僚が迷惑するので、残念ながら紙面発表は匿名希望で書きます。
 先日この欄に苫小牧の先生も書かれていたが、これはもはや異常な状態ではないのか。これはもう教育の場などではなく、札束の動く世界。教育が生徒をダシにして、受験業のカネの力に屈した世界ではないのか。
 私は苫小牧の先生ほど、コトを楽観視してはいない。カネをばらまくだけの効果はあるのだ。以前は土曜の午後と休日に、希望者だけに受けさせていた業者模試が、今ではなかば強制になっている学校も多い。さらには、正規の授業時間内に金をとって堂々と業者模試をやっている学校さえあるのだ。
 ことはしかし、民間だけではない。やはり9月某日。自衛隊札幌地方連絡部主催の進路説明会。場所市内某レストラン。時間11時〜14時。食事付き、送迎付。国民の税金を使っている自衛隊までが、なぜわざわざ昼食をはさんで送迎までつけて進路説明会をしなければならないのか。正規の説明会なら、当然学校から外勤交通費の実費は出るのだ。
 問題なのは、こんなことが今、教育現場で平然とまかり通っていることだ。はたしてこれが世間の常識の範囲内なのか。教育現場以外の人たち、特に当事者である受験生と親たちの意見を聞きたいと私は思う。

(北海道新聞「読者の声」 1980年10月11日掲載)

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